『われらをめぐる海 』(早川書房)111号である。
なんと美しい数字だろう。
うっとり・・・
「けれどもむろん、例外はあるので、大圧力に関連する海の生命の奇蹟は、おそらくは5トンから6トンにも達する圧力に耐えて、生涯を海の底で送っている生物たちではなく、規則的に昇降して、何百あるいは何千フィートにもわたる垂直の変化を行う生物たちである。
日中、深海に降りてゆく小エビやその他の動物プランクトンは、その例である。
これに対して、浮き袋を持っている魚類が、水圧の急激な変化によって致命的な影響を受けることは、100ファゾムの深さから引き揚げたトロール網を見たことがある人なら、誰でも知っている。
網に捕らえられ、水のなかをぐっと引っ張られて、圧力が急速に小さくなってしまうというような事故でなくても、魚たちは、ときどきかれらに適応した領域からさまよい出て、帰れなくなってしまうこともあるだろう。
おそらく餌を追っているうちに、彼らの住む深海の天井−その眼に見えない境界の向こうまで迷いだしてしまえば、当然、異質で不自由な条件に遭遇しないわけにはいかないだろう。」
(前掲P73 15行目〜P747行目)
「深海の天井」
これは非常に優れて詩的な、でも浮き袋を持った魚たちにとってはおぞましい表現である。
実はMarsPは、深いところから引き揚げられた魚は全てげぼっとでも言うように、内臓を少し口から出して登場するのだと思っていた。
この本を読んで、そういえば大変な距離を上下する生き物の存在することに気付いたのである。
自分が一番良いように体の構造を進化させてきた海中の生物たち。
そのなかでも、海の世界には踏み込んでしまってはいけない領域があるということなのだ。
謎だ・・・謎だ・・・
そして海の中で生命が生きていることそのものが奇跡だ。